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非遺伝子組み換え作物の保護を! 地方自治体レベルのネットワークが発足

Yukari Saito

NO GM 欧州地方自治体ネットワーク

【フィレンツェ5日=齋藤ゆかり】バイオテクノロジー企業の後押しに熱心な米国政府の圧力に抗しきれず、遺伝子組み換え生物(GM)の栽培と販売を規制緩和しつつある欧州連合(EU)で、州法などにより以前からGMの栽培や販売を禁止している20の地方自治体が、共同で非GM農業を守るため、「欧州GMフリー地方ネットワーク」を発足させた。

 ネットワークは、3日午後からイタリアのフィレンツェで開かれていた第3回ヨーロッパGMフリー地方自治体ネットワーク会議で、10項目の目標を掲げる「フィレンツェ憲章」を発表し正式に発足した。

 4日にイタリア、フランス、オーストリア、スペイン、英国、ドイツ、ギリシャの7カ国にまたがる20の州または地方レベルの農政担当責任者が、憲章に署名した。

 20の自治体代表は、行政上管轄や立法権など、国内法の絡みから、権限の範囲などは必ずしも同質ではない。しかし、環境、伝統とも様々な土地の農林業や環境保護に関し、具体的な事情を把握し直接の行政責任を担っているのは、地方自治体。そうした責任にふさわしい自主決定権を求める、草の根からの民主主義運動の一つといえそうだ。

 ネットワーク結成のきっかけになったのは、2003年7月、欧州連合(EU)が行った遺伝子組み換え生物に関する政策の軌道修正。遺伝子組み換え生物混入率0・9%以上の食品、飼料、加工品に詳しいラベル表示の義務づける代わりに、それまで規制されていた遺伝子組み換え種の輸入解禁に踏み切る決断を下したことだった。

 この変化を受けて、同年秋、イタリア・トスカーナ州やオーストリア・オーバーエステライヒ州、フランス・リムーザン地方など、すでに独自の政策で遺伝子組換生物の導入を禁止している10の州レベルの自治体が、ブリュッセルに集まりGMフリーゾーン維持のために対策会議を開いて共同声明を発表。以後、ほかの自治体も加わって、GM導入が及ぼす影響についての研究を重ねる傍ら、農業や消費の現場の声を反映する政治的な圧力になり得るネットワークの結成を準備してきた。

 EU政府は、昨年12月、非遺伝子組み替え種と遺伝子組み替え種の共存が可能との見解を発表した。しかし、地方自治体の間では、農家の耕作面積が平均6ヘクタールに満たない中・小規模経営中心の欧州農業において、組み換え種による伝統種栽培への汚染は不可避であり、いずれ前者が後者を駆逐しかねないという認識が一般的だ。

 また、安価なGM種の普及は、オーガニック農業をはじめとする付加価値の高い非GM農作物の栽培で成り立っている在来農家の経営を窮地に追い込み、欧州の農業そのもの破壊するとの見方が強い。

 さらに、GM種が環境や人体に及ぼす影響の研究も、推進派による研究がほとんどであり、しかも、将来にわたり100パーセントの安全を保証できるだけの水準には至っていないとみなされている。

 EU政府のGM解禁は、GM栽培・販売禁止政策を推進する地方自治体を、自由貿易の原則に反するという理由でバイオテクノロジー企業から訴えられ、巨額の罰金を科される危険な立場に放り出すことになる。

 こうした状況の中、ネットワークは、持続可能な発展、市民の健康と消費者の保護、環境保全を謳うEU憲法を盾に「フィレンツェ憲章」を掲げて攻勢に出た。

 憲章は、生物の多様性と何を食べるかを自分で決める食の主権を維持するためには、GMへの歯止めが必要であると主張し、GM問題に関する決定権は地方政府に委ねられるべきと訴える。また、数々の環境保護に関する国際協定に定められた「汚染する者は被害を賠償する原則」をGM栽培にも適用した制度の確立を求めている。

 ネットワークは、すでに反GMの立場を表明している市町村をバックアップするとともに、欧州の農業経済、伝統、自然の保護と消費者の選択の自由を保証するため、GMフリー権の確保をめざして各国政府とEU本部に対し働きかけていく。

 さらに、フランス・ブルターニュ地方政府がブラジル・パラナ州との間ですでに交わしている非GM大豆の長期買取契約のような、EU圏外の非GM作物栽培地域との連帯、協力のほか、GM生物の人体への影響だけでなく経済や環境への影響も視野に入れた独立機関による研究の支援、消費者への情報公開と関心喚起や地方自治体レベルでの情報交換、統一行動にも力を注いでいく予定。

 なお、本ネットワークに名を連ねるオーストリア・オーバーエステライヒ州は、EU政府のGM解禁の決定を不服とし、欧州裁判所に訴えた。3月17日に判決が下される。

(注)「フィレンツェ憲章」に署名したEUの州・地方は、以下の通り。

イタリア(トスカーナ州、マルケ州、ラツィオ州、サルデーニャ州、エミリア・ロマーニャ州、ボルツァーノ自治県)オーストリア(オーバーエステライヒ州、シュタイアーマルク州、ザルツブルク州)、フランス(ブルターニュ地方、リムーザン地方、アキテーヌ地方、イル・ド・フランス地方、ポアトゥ・シャラント地方)、ドイツ、ブルゲンラント州、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州)、英国(ハイランド&アイランズ地方、ウェールズ地方)、スペイン(エウスカディ[バスク]地方)、ギリシャ(ドラマ・カヴァラ・クサンティ地方)

 ギリシャのドラマ・カヴァラ・クサンティ地方の代表によると、同国では55ある地方のうち54が過去2年間に反GMの立場を表明。国民のGM拒否率は93パーセントに及ぶという。
 
 

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